海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「ああ、そっか。そういう事…。」


虚ろな瞳の私が、微かに呟いた言葉。


それは、


『相葉先生は渡せないけれど、その代わり就職先ならあげるわよ。』


そういう事なのだと、理解した瞬間に零れた言葉だった。


そして、


就職を受け入れるしかない本当に非力な自分にも、


大崎先生とは家庭環境自体が余りに違うという事も、


どうする事も出来ない、その全ての状況にも、


何もかもに気付いた瞬間だった―…




ずっと待ち望んでいた嬉しい結果が、想像もしていなかった最悪な結果に変わり、


『もしかしたら、大崎先生は本当に良かれと思って力添えをしてくれたのかもしれない』


心のどこかではそう思いたかったのに、


大崎先生の言葉によって、その希望は見事に打ち砕かれてしまった。



トボトボと教室に戻り、すっかり喜びが冷めている自分とはまるで正反対の、


瑞穂や梢、他のクラスメイト達のキラキラした表情を見て、その温度差に胸が痛んだ。



「おめでとう!」


沢山のお祝いの言葉に「ありがとう。」と答えると、改めて採用になった事を報告した。


そしてすぐに、


「ごめん、ちょっとトイレに行ってくる。」

そう言って、私は教室を出た。


その時の私の表情に、何か違和感を感じたのだろう。


「さく…?」

瑞穂と梢がすぐに追いかけてきた。


私は無言でトイレに飛び込むと、運良く誰もいない事にほっとした。
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