海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
その様子を見ていた瑞穂はすかさず、

「先生、最近さくが先輩にイジメられてるみたいだから頼むね。」

と、私に何の確認もしないで、相葉先生にバラしてしまった。


『何で言っちゃうの!?』

そう思った時、


「そうなのか?」

と、驚いた顔で相葉先生が私に問い掛けた。


相葉先生が驚くのは無理もない。

私がそんなに目立つタイプじゃなかったからだ。

多分、普通。

残念なくらい、普通。


「いや…イジメって訳じゃないの。すれ違う時とか、ちょっと嫌な事を言われる感じだから大丈夫だよ、ホントに。」


そう言って、私が胸の前で手を小さく左右に振りながら瑞穂を見ると、目が合った瞬間、瑞穂はバツが悪そうに目を逸らした。


『もう!』

心の中でそう思いつつも、瑞穂には全く悪気なんか無くて、むしろ心配しているからこそ出てきた言葉なんだろうなって分かっているから、瑞穂を責める気持ちなんて少しもなかった。


「まぁ…何かあったら言いな?でも、あんまり目立つような変な事するなよ?」


「それどういう意味ー?しないよ!」

私が笑いながら怒ったふりをすると、


「そっか。」

そう言って、相葉先生もクスクスと笑った。


状況がそんなに深刻ではないという事がきちんと伝わって、私はほっとしていた。



相葉先生は優しい。

だけどその優しさは私が生徒だから向けてくれるものだって事も、

それが生徒用の優しさなんだって事も分かってる。

だけど…

だけどね先生、

私は先生の特別になりたいよ…。



少しだけ切ない気持ちになりながら、「さようなら」と挨拶をして瑞穂と一緒にパソコン教室を出た。
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