海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
式が終わって教室に戻ると、担任の先生が今度こそ本当に最後の言葉を私達にかけてくれた。


私達は涙でグシャグシャになりながら先生の話を聞き、


ホームルーム終了後、先生に改めて御礼の挨拶をして、それから友達同士で抱き合いながら泣いた。


他のクラスの友達とも一頻り別れを惜しみ、お互いに写真を撮り合い、ずっと友達でいようと約束し合った。



瑞穂と梢とも、沢山泣いて別れを惜しんだ。


特に梢とは、今後はすぐに会えなくなる分、とても寂しかった。



ある程度の時間が過ぎて、徐々に生徒達が帰っていく頃、私達3人も帰る準備をし始めた。



「そろそろ行こっか…。」


教室を離れる事に名残惜しさを感じながら、私達は教室を出て、1階のロビーへと向う。



私には、どうしても帰る前にやり遂げたい事があった。


高校生活最後に、どうしても―…




「瑞穂、梢…」

私が二人に声を掛けた時、まだ全部言い終わらない内に、



「私達はここで待ってるよ。」

そう言って、二人は私に向かって手を振り、ロビーにあるソファに腰をかけた。



「頑張って!」

二人から励ましの言葉をかけられて、



「うん。行って来るね。」

私は二人に手を振り返して、パソコン教室の準備室に向かって歩き始めた。



相葉先生に恋をして以来、この2年間で私は何度もこの廊下を歩いた。


瑞穂や梢と楽しく歩いた事もあれば、


先輩に因縁をつけられた事もあったし、


相葉先生にドキドキしながら、笑い合った事も、


相葉先生の事で泣きながら歩いた事も、沢山あった。



そんな場所で、この2年の間に起きた出来事を思い出しながら廊下を歩いていたせいなのか、


不思議な程、ギクシャクした気持ちや相葉先生への体裁の悪さだとか、何もかもが気にしなくて良い事のように思えた。


自分に都合よく考えていたのかもしれないけれど、相葉先生が身に着けてくれたネクタイが、そう教えてくれたような気がしたから。



“何も気にするな”と…。


そんなメッセージのように感じた。
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