海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
パソコン教室が近付くにつれ、私の心臓はドキドキと大きく高鳴っていく。


パソコン教室へと続く渡り廊下に入る為のドアを引いてみると、鍵が開いていた。


それは、その先にあるパソコン教室の準備室に、相葉先生がいる事を予感させた。


渡り廊下に入る前に大きく2回深呼吸をして、一歩、また一歩とパソコン教室に近付いて行く。


今まで何度もパソコン教室を訪れたけれど、間違いなく、過去最高に緊張していて、


その緊張感の中でも、


『これが先生との最後になるのかもしれない。』


そう思うと、胸が張り裂けそうだった。




パソコン教室に到着した時、もう一度大きく深呼吸をしてから、準備室のドアをコンコンとノックした。


「はい。」

いつもの、もう何回も聞いた相葉先生の返事が聞こえた。




『あぁ、やっぱりいた。』

そう思いながら、



「失礼します。」


私も今までと同じように声を掛けてドアを開けた。



イスに座った相葉先生がこちらを振り返り、私と目が合った。


先生が吸っているタバコの白い煙が、ブラインドからの木漏れ日でところどころオレンジに色を変えていた。



「河原…。」

少しだけ驚いたような表情の相葉先生に、



「先生、ここにいて良かった…。」

私はそう言って、少しだけ微笑みながら相葉先生を見つめた。


振り返った相葉先生が身に着けていたネクタイは、やっぱり私がプレゼントした物だった。
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