海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
私達がこの自動車学校を卒業するのも間近に迫っていた。


「じゃあ、また明日ね!」

「うん、ばいばい!」


私達はそれぞれの自宅方面に合わせた自動車学校の送迎バスに乗り込んで、帰宅した。


揺られるバスの窓から見えたのは、暗闇でも白く光る雪景色。


寒い一日が、卒業式の日から変わらずに続いていた。



自分の部屋で一人になった時ほど、辛い時間はなくて、


ぼーっとしていると、嫌でも相葉先生の事ばかりが思い浮かぶ。


たった数日しか経ってないのに、


『もう、私の事など忘れてしまったかもしれない。』


そんな風に思って不安にかられたりもした。


諦めようとしているのに忘れられる事を恐れる、矛盾した自分に気付く度に、



「もう、考えるな…。」


そう言って、私は頭の両側を押さえて首を振った。


こうして首を振る事で、完成したパズルのピースがバラバラになるように、


相葉先生との記憶が崩れて消えてしまったら、私は楽になれるのかもしれない。


辛かった事も、寂しさも、全て消えて楽になれるのかもしれない。


けれど…


私の記憶から相葉先生が消えるという事は、どんなに寂しく、悲しい事だろう。



どんなに辛くても、


どんなに悲しくても、


相葉先生は、私が心の底から想った人に違いないから―…




忘れたい。

けれど、忘れたくない。

忘れて欲しくない―…



これが、私の正直な気持ちだった。
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