海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「さくは青山先生の事を好きになろうとしているの?」


待合室で話しかけてきた瑞穂は、さっきまでのふざけた表情ではなく、至って普通に問い掛けてるようだった。


「好きになれたらいいなって思っているけれど、まだ分からない…。」


うまくいくいかないに関わらず、


『好きになれたらいいな』


そう思っているけれど、実際のところ自分でも好きかどうかはよく分からなかった。


私の心の中に、まだ相葉先生がいるからだ。



「私は、無理に相葉先生の事を忘れる必要はないと思うんだ。」


ゆっくりと瑞穂が話し始め、そのまま続けた。


「だけど、この先本当に青山先生を好きになったのなら、それでもいいと思うの。」


顔を上げて私を見た瑞穂は、


「青山先生がどういう人なのかは私にもよく分からない。だけど、さくが“好きになりたい”って思っているなら、私は止めないよ。応援するから。」


そう言って、優しく微笑んだ。



瑞穂が言っている事は、


『それで前向きな恋が出来るなら、ちゃんと応援するからね』


そういう意味だって事が、私にも伝わってくる。


相葉先生の事で何度も泣いて、何度も悩んでいた私を、一番近くで見てきたからこそ、瑞穂はそう思ってくれているんだ。


「ありがとう…。まだ分からないけど、好きになれたらいいなと思ってる…。」


瑞穂と同じように微笑んだ私の本心だった。


本当に好きになれるかなんて分からないけれど、そう思っていた。
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