海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜

嫉妬

―――
――――…

相葉先生が薦めてくれたワープロ検定まで約1ヶ月。


合格する為に、授業中も自宅でも毎日必死に練習している。


合格の為だけじゃなくて、相葉先生に“出来る子”って思われたい一心で頑張ってる。


そして今もパソコンの授業中。


毎日必死にやっているけれど、時々思う事がある。


パソコンだけではなく、簿記も含めての事だけど、私よりもうまく出来ない生徒は沢山いて、相葉先生はそういう生徒の傍に近寄っては笑顔で教えている。


いつか私にしてくれたように、頭をポンポンっと撫でる姿が嫌でも目についた。



今だってそうだ。


ちょうど、私の斜め前の席の子の傍で、先生は優しく笑っている。


教えられているその子まで、嬉しそうな顔をしているように思えてきた。


そういう様子を見ていると、


“パソコンも簿記も全部、出来ない方がいいんじゃないか”


そう、思ってしまう自分がいる。



『出来ない方が、先生の優しい手を掴む事が出来るような気がする―…』


そう思った時、私はハッとした。


私をそういう気持ちにさせるのは単なる嫉妬で、行動に出さないだけで、私に嫌がらせをしてくる先輩達と気持ちは同じだということ。


この事に気付けなかったら、私は自分の中で渦巻く嫉妬心にすっかり飲み込まれていたに違いない。
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