海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
ある日、私は瑞穂の家に遊びに行った。


何かをする気力なんてなかったけれど、瑞穂には会いたいって思った。


私にとって瑞穂は、相葉先生の事もそれ以外も、何でも話せるすごく貴重な存在だったから。


ずっと近くにいてくれた事を、心から感謝してる―…



瑞穂に相葉先生の結婚の事を話すと、私と同じ位驚いていた。



「え…。」


そう言って言葉を詰まらせた瑞穂は、しばし無言だったけれど、


すぐに、



「さく、大丈夫?」


そう言って、私の顔を見つめた。


私がどれ程相葉先生の事を想っているのか、それを一番近くで見てきたのは間違いなく瑞穂で。


そんな瑞穂だったからこそ、私のショックをすぐに受け止めてくれた。


「うん、大丈夫…。」


私は弱く笑いながら答えた。


「ちゃんとごはん食べてるの?」


「うん、食べてる。」


「ちゃんと寝てる?」


「…あんまり眠れない…。」


「そうだと思った。なんかやつれてるよ。」


瑞穂はそう言って、心配そうに眉をひそめた。


家族に気付かれまいと、なんとか食事は取っていたものの、自然と量は減り、私は少し痩せた。


睡眠不足の影響もあったんだと思う。



「なんか…。」


「うん?」


私が俯き加減でゆっくり話し始めると、瑞穂は私の話をせかす事無く、じっと耳を傾けてくれていた。


「どうしていいか分からなくて。やっと自分の気持ちと向き合って答えを出したのに…なのに、結婚しちゃうなんて…。」


「…」


「先生の結婚を祝福する事が出来ないのに、このまま“先生が好きだ”って突き進む事も出来ない…。」


「そりゃそうだよ、そんなに簡単じゃないよ…。」


瑞穂はそう言って視線をぼんやりと下に落とすと、口をつぐんだ。



「頭の中では分かってるんだよ。祝福してあげなくちゃって…分かってるのに…。」


話している内にまた涙がこみ上げてきて、私は両手で顔を覆った。
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