海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
分かってる。


相葉先生を祝福してあげなくちゃいけない事も、


先生が選んだ幸せなんだって事も分かってるんだよ…。


だけど、


こんなに好きなのに、先生が選んだ相手が私ではなかった事が悲しかったんだ。


この先もずっと、きっと永遠に、相葉先生が私の傍にいてくれる事は無いって事が、


どうしようもなく悲しかったんだ…。



「ゆっくりでいいんじゃないかな。」


瑞穂が呟いた言葉に、


「え…っ?」


私はグスッと鼻をすすりながら顔を上げて、涙を浮かべた赤い目で瑞穂を見つめた。


「無理だよ、すぐに祝福するなんて。私にだって出来ないと思う。すごく好きだったんだから…。」


「うん…。」


涙声で返事をしながら、私はまた両手で顔を覆った。


我慢しようとしても嗚咽が漏れる。


どうしても涙が止まらなくて、そのままで瑞穂の優しい言葉を聞いていた。



「今は悲しいと思うけど、いつか祝福できたらいいんじゃないかな…。それに、私はさくみたいにすごく誰かを好きになった事がないから羨ましいよ?」


「…?」


私は涙を拭いながら瑞穂を見つめると、瑞穂は優しく、そして少しだけ悲しげに微笑んでいた。


「そんなに好きになれる人に出会えた事も、すごくすごく誰かを好きになれた事も、私はすごく羨ましいよ。すごい事だよ。辛い事が沢山あったかもしれないけれど、私もそんな恋をしてみたいよ。」


聞き終えた瞬間、私の顔はクシャッと歪み、


「さくはすごいよ…。」


私は瑞穂の言葉で、ますます涙が止まらなくなってしまった。



すごい?羨ましい?


何度も深く傷ついたり、こんなに辛い思いをするのなら、


好きにならなければ良かったって、心のどこかで思っていたのに。




『それでも羨ましいの…?』


そんな疑問で口を閉ざしていた私に瑞穂はもう一度、


「なかなか、そんなに人を好きになれないと思うんだ…。」


そう言って、少しだけ首を傾げながら私を見つめた。
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