海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「分かってるよ!平気なわけないじゃん、寂しいよ!」


「じゃあ、どうしてそういう感じなの!」


「俺だって自信がないんだよ!これから働き始めるし、続くかどうかだって分からないのに…。」


「だって頑張ろうって思っているんでしょ?」


「そうだけど、1年位は遠距離でもいいかなって思ってた…。」


「…」



大和の最後の一言で、私は言葉を失った。


それが大和の本心なんだって、分かったから―…


彼を焦らせるつもりなんてなかった。


私だって働こうと思ってるし、当然、今すぐ結婚して欲しいなんて思っていない。


それでも、私が仕事を辞めて彼に着いて行くという事は、彼にとっては単にプレッシャーにしかならないのかもしれない。


“一緒に行こう”


そう言って欲しかったという私の気持ちは、我侭でしかなかったのかもしれない―…




すっかり無言になった私は涙も止まり、まっすぐ前をぼんやりと見つめていた。


「…ごめん。今はまだ試験結果も出ていないし、その事はまた今度考えよう?」


大和の言葉に納得した私は、


「うん、ごめんね…。」


そう言って頷いた。



大和の気持ちは理解できた。


けれど、


仮に1年という短い時間だとしても、彼が遠距離でも良いと思っていた事がショックでならなかった。


離れたらあっという間にこの関係が壊れてしまうような気がしていた私は、きっと、まだまだ子供だったんだ―…




それから数日後、彼の就職試験の結果が出た。




“採用”




そう書かれた用紙をキラキラ笑顔で喜ぶ大和に見せられると、


「おめでとう!」


嬉しさのあまり、私達は抱き合って喜んだ。



遠距離になる、ならないの問題はあったけれど、


それでも、大和が希望する仕事に就いてもらえる事は本当に嬉しかったんだ。
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