海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
母との電話を終えた私は、


「まずは洗濯でもしますか。」


そう言って、先程拾い上げた服を抱えて立ち上がると洗濯を始めた。



『洗濯が終わったら食料品の買い物に行こう。それまでは部屋の片付けかな…。』


そんな予定を立てながら大和が帰ってくるまでの時間を過ごして、



その夜19時過ぎ頃―…



夕飯の支度をしながらキッチンに立っていると、ガチャガチャッと玄関ドアの鍵が開く音がした。



『大和だ!』


そう思って玄関とリビングを仕切るドアを見ると、開いたドアの向こうから満面の笑みの大和が入ってきた。


茶髪のロン毛にジーンズ姿ばかりだった大和が、黒髪の短髪になってスーツに身を包んでいる。


「さくー!やっと来たー!」

「うふふ、お帰り。」


大和は持っていたカバンを放り投げると、キッチンにいる私をギュッと抱き締めた。


私も自分の腕を大和の背中に回して彼を抱き締めると、久しぶりに大和の匂いに包まれた気がした。



「すごく会いたかったよ。」


そう言いながら私が彼を抱き締める腕に力を入れると、大和も私に負けない位強く抱き締めたまま、


「俺も。さくが来るのをすごく楽しみにしてた。」


と私の耳元で囁いてから、キッチンに視線を移した。


「今日はハンバーグ?」

「うん、ハンバーグ。それにレタスと卵のスープ。」

「やった!」


そう言って、大和は嬉しそうに目を輝かせている。



「今日からしばらくの間、泊めてね。」

「もちろん!」


彼はそう言って私を引き離すと、キラキラした瞳でニッコリしながら、


「ただいま。」


もう一度そう言って、私に軽くキスをした。


“ただいまのキス”


新婚生活のような甘いスタートに、くすぐったい程の幸せを感じながら、


「おかえりなさい。」

と、私は大和に微笑み返した。
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