海に降る恋 〜先生と私のｷｾｷ〜
大和は慌しく歯を磨き、顔を洗って寝癖がついた髪の毛を整えると、Ｙシャツを羽織ながら、


「今日は何をするの？」

そう言って私を見た。


「今日は何をしようかなぁ。とりあえず掃除でしょ？あとは食料品の買い物とかかな。」

「今までずっと仕事で忙しくしてたんだし、少しのんびりするといいよ。」


彼の優しい言葉に、


「ありがとう。」

食べ終えた後の二人分の食器を片付けながら、私は彼に向かってお礼を言った。



「行って来ます！」


着替え終わった大和は、カバンを掴んで玄関の方へと足早に歩き出した。


キッチンに立っていた私は、手についた水をタオルで拭いてから慌てて大和を追いかけて、靴を履いている大和の後ろに立った。


「お仕事頑張ってね。」

私が声をかけると、パッと大和が振り向き、


「戸締りしっかりね。行って来ます。」


チュッと小さな音を立てて“行って来ますのキス”をした大和が、手を振りながら出勤していった。


「気をつけてね。」


ドアが閉まる寸前に言った言葉が大和に届いたかどうかは分からないけれど、笑顔で手を振っていた大和の表情が、残像のように目の奥に残っていた。


「…さて、続きでもしますか。」


私は片付け途中だったキッチンに戻ると、


『結婚したらこんな毎日が続くのかな…。』


そんな幸せな気持ちに浸っていた。



大和との生活が始まったばかりのこの時、

これからもずっと、この気持ちを忘れたくないと思っていた。
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