海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「訓練どう?楽しい?」

「うん!楽しいよ。友達も出来たし。」



大和と一緒に夕飯を食べている時間は、ほぼ毎日、その日一日の出来事をお互いに話す事が出来る、大切なコミュニケーションの時間だった。


話を聞いている限りでは大和の仕事は順調そうで、


時々、自分が起こしてしまったクレーム処理で肩を落として帰ってくる事もあったけれど、


先輩方や上司に可愛がられている事が伺えた時は、とても嬉しかった。


会社帰りに飲みに行く事になった時は事前に連絡をくれたし、殆どの場合、私は気持ちよく送り出していた。



そんな風に、穏やかに毎日が過ぎていった―…



その時間の進み方驚く程早くて、あっという間に1ヶ月が終り、


まだ残り2ヶ月あると思っていたのに、


2ヶ月目が終わるのは、1ヶ月目が終わった時よりも更に早く感じた。



興味深い授業を受け、私とは違う経験を積んできた友達とお喋りをする。


『沢山の知識と情報を得て、刺激を受ける事が出来る楽しい時間は、どうしてこんなにも早く過ぎていくんだろう。』


毎日、そう思っていた。



そして…

3ヶ月目に入り、修了までの残りの期間が少なくなってきた頃だった。




「河原さん、ちょっといい?」


授業を終えて、これから帰ろうとしていた時に、訓練施設の先生から呼び止められた。


私を呼び止めたのは、椎名京子先生。


私達の訓練を受け持つ先生方の中でも、核となる先生だった。


年齢は40代後半に見えたけれど、実年齢が分からない程、髪型も服装も全てがお洒落でカッコ良く、女性なら誰もが憧れてしまうような人だった。




「はい。」


私は椎名先生に案内されるまま、教室を出て別の部屋に入った。


「どうぞ。」

「失礼します。」


私は椎名先生に促されるまま、アンティーク調のゆったりとしたソファに腰を掛けた。



『私、何か怒られるような事とかしたかな…。』


そんな不安が、私の心をよぎった。
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