海に降る恋 〜先生と私のｷｾｷ〜
―――――…

「ただいま。」


初出社だったこの日の仕事を終えて私が帰宅した場所は、今までの大和の部屋ではなかった。


パソコン講師の仕事が決まった後、訓練が修了する前に自分の部屋を探して、大和の住むマンションまで歩いて５分位の場所にある物件に決めた。


１２帖のワンルーム。

初めて一人暮らしをする私には、十分な広さだと思った。


ダンボール箱がいくつか重ねて置かれている、まだ完全に荷物が片付けられていない部屋に入ると、


私は着慣れていないスーツのジャケットを脱いで、肩が凝った様に感じていた首をぐるりと回した。


立っていた時間も長く、久々にパンプスを長時間履いていたせいか、足がむくんでいるような気さえしていた。


「疲れたー…。」


部屋着に着替えた私は、そのまま仰向けでベッドに倒れこむと、瞳を閉じた。



訓練を受けていた３ヶ月の間、毎日のように接してきた人ばかりの職場に勤めた事によって、その空気に馴染みやすかった事は私にとって好都合だったのだけれど、


それでも、やはりこの一日はずっと気が張っていたのだろう。


緩んだ緊張の糸は、猛烈な眠気を誘った。



『勉強しなくちゃ…。』



そう思ったのも束の間。

ついウトウトとし始めて、私の意識は途絶えた。
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