海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「明日のお弁当の準備、しておかなくちゃね。」


そう言ってキッチンに向かう私を、


「いいよ、作らなくて。」

と、大和が止めた。



「…いらないの?」


キョトンとした表情を浮かべて首を傾げると、大和は乾いたバスタオルを私に持たせた。


「適当に食べれるから大丈夫だよ。さくも疲れているんだし、お風呂にでも入りなよ。」

「そっか…分かった。どうもありがとう。」


大和の気遣いに、私は素直に甘えさせてもらう事にした。


そんな私の反応を見て、微笑みながら小さく数回頷いた大和は、私を軽く引き寄せて抱き締めると、


「早く入っておいで。」

そう言いながら、ポンポンッと優しく頭を撫でた。


「うん、行ってくる。」


ゆっくりと大和から離れた私は、先程渡されたバスタオルとパジャマなどの必要な物を手に取って脱衣室に入った。



『お互いを思いやれるこの関係を保ちたい。』


そんな気持ちで一杯だった。




この日は2人とも疲れていたらしく、お風呂に入り、しばらくテレビを見た後は、どちらからともなくベッドに潜り込んだ。


「明日の朝ごはんとかも作らなくていいからね?さくも支度があるんだし。」

大きなあくびをしながら優しい言葉をかけてくれた、おやすみモードの大和に、


「ありがとう。」

と、お礼を言った。


実際、出勤時間は私の方が早かった為、大和の言葉はありがたかった。



「明日も頑張ろうね。おやすみ。」

「おやすみ。」


私達はおやすみのキスをすると、手を繋いだまま、寄り添うようにして眠った。




その翌日―…


大和よりも早く目を覚ました私は、

彼が起きないように静かに着替えを済ませると、まだ眠る大和を見つめて


「行って来ます。」

そう、小声で囁いてから、なるべく音を立てないようにして部屋を出た。



自分のマンションに向かう為に表へ出ると、少し肌寒い朝の空気の中に、暖かな日差しが差していた。
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