海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「初授業はどうだった?」

久々に一緒に食卓を囲んでいる大和が、私に問い掛けた。



今日は土曜日。


大和とは違って、私の休日は毎週日曜日。それと、不定期なお休みが月に2日もらえる事になっていた。


私は仕事が終わってからスーパーで買い物をし、久々に大和に手料理を振舞う事にした。


翌日がせっかくの休日だから、この日は授業の為の勉強よりも、大和を優先しようと思ったのだ。



久々にゆっくりと会う事が出来た大和は、とても満足そうな表情で料理を口に運んでいる。


もっとも、満足に感じてもらえる理由は、私に会ったという事よりも、ごはんが食べられた喜びの方が強いように感じたけれど、それはそれで良しとする事にした。



「緊張したよ。もう、すごい必死。」


私は大和にそう答えると、その後も生徒さんの様子や他の講師達の話などを、食事そっちのけで話した。


大和も料理を口に運びつつ、「うん、うん」と相槌を打ちながら、私の話を聞いてくれていた。


そんな大和に、


「最近、お家の事とか出来なくてごめんね。」

改めてそうお詫びすると、


「ううん、いいんだ。気にしないで。」

殆ど食事が終わった大和は、そう言って微笑んでくれた。


だけど、問題はこれからなのだと私は感じていた。


今回の授業は最初であって、これからどんどんその機会が増えていくのだから、当然、自宅での準備はこの先もし続けていく事になるのだ。


だからこそ、それを早い内に伝えておかなければならないとも思っていた。



「…多分…。」

「うん?」


ゆっくりと話し始めた私の言葉の続きを、大和は待っていた。


「…多分、しばらくの間は自分の仕事で精一杯になると思うの。」

「うん。」

「こういう生活が続くと思うんだけど、大和は許してくれるかな…?」


大和はじっと私の顔を見つめていた。
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