海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「もう俺達別れよう。さくは仕事に集中した方がいいと思う…。」


強張った表情のままで呟いた大和のこの言葉を、



「そう…。」

私は受け入れる事しか出来なかった。



大和が別れを選択するような生活を続けてきたのは私だから。



私は大和が満足できる生活よりも、仕事を選んだのだ。


そんな私に、大和にすがりつく権利なんてある訳がなくて。



「…分かったよ…。」


大和の言葉を受け入れた私は、込み上げる涙を止める事に必死だったけれど、


自分の手が届く範囲にある私物をかき集めている途中で、とうとう涙が一粒、床に落ちた。



「今日持って帰れない荷物は今度取りに来るから、部屋の鍵を返すのはその時でもいいかな…。」


そう問い掛けると、



「…うん…。」

そっぽを向いたまま、大和は答えた。


もう二度と、キラキラした満開の笑顔を私に見せる事はないのだと、痛い程感じていた。



「今までありがとう。ごめんね…。」

「俺の方こそ、ごめん…。」


私が感謝と謝罪の言葉を口にした時、ようやく彼が私の方を見てくれて、

その時の大和の瞳には、うっすらと涙がかかっていたように見えた。



泣きたかった。


きっと、


大和も私と同じ位泣きたかったんだと思う。




「…私、行くね。」


自分の物をギュウギュウに詰めたバッグとコートを抱えて、私は玄関に向かった。


一秒でも早く去らなければ、大和に“別れたくない”とすがってしまいそうだったから。


そんな資格、私には無いから―…
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