海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
相葉先生の視線の先を辿るように、私もそちらの方向を見ると


「さくー。」


20m程離れた場所にあるロビーのソファから立ち上がって、瑞穂と梢が笑顔で手を振っていた。


『さっきの一件で、随分二人を待たせてしまった。』


と、後悔したけれど、あんな事があった直後に一人で帰ることにならなくて、かなり安心している私がいるのも事実だった。


「先生、本当にありがとうございました。」


私は立ち止まって相葉先生に一礼し、“さようなら”の挨拶をすると


「おぅ、気をつけてな。」


と、先生もニコニコしながら手を振って職員室に入っていった。



「さく、遅かったじゃん。」


そう言いながら、瑞穂と梢がニヤニヤしながら歩み寄ってきた。


そんな二人を見て私は、


『二人とも何か良い事があったと勘違いしているんだろうなぁ…。』


なんて思いながら、


「それがちょっと…。」


そう言って、私が深い溜め息をつきながら返事をすると、ついさっきまでニヤニヤしていた瑞穂と梢は不思議そうな表情に変わった。


「歩きながら話そっか。」


私達は3人並んで下駄箱に向かって歩き出した。
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