海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
カチャッ


眩しい朝の光をカーテン越しに感じながら、私はベッドから手を伸ばして、アラームが鳴る前の目覚まし時計を止めた。


この日の朝は、驚く程早く目が覚めた。


“早く目が覚めた”というよりも、“殆ど眠っていなかった”と言った方が正しいかもしれない。


昨晩は深い眠りにつけずに、何度も、何度も、目が覚めていたのだ。


眠れない事に悶絶していたせいで疲労感があったし、

そんな風に迎えた朝のテンションは最悪だった。



私はベッドの上で上体を起こすと、大きく一つ伸びをした。


カーテンを開けると、予想通り空は快晴。


どんなに眠れなかろうと、疲れた暗い表情で会社に行くわけには行かないのだ。



「さぁ、支度!支度!」


自分のテンションを上げるべく、ベッドから出ると、いつものようにバスルームへと向かった。


熱めのシャワーでスッキリした後は、朝の情報番組を見ながら身支度を整える。



腰の辺りまで伸びた、限りなくブラックに近いブラウンの髪は緩く巻いて、顔にはファンデーションを塗った。


今日のアイシャドウはブルーグレー系。


アイラインを細めに引き、まつげを濃く、長く見せるマスカラも絶対に欠かせない。


頬にチークを叩き、ヌードベージュのグロスを唇にオン。


スーツはいつも通り黒。


程よく体にフィットしたジャケットとスカートに、インナーは首周りが大きく開いた白のカットソーを選んだ。


首にはDiorの小ぶりなペンダントを。


もちろんパンプスは、いつもの高さのピンヒールにするつもり。


実際になっているかどうかは別として、イメージはクールビューティー。


これが、いつも通りの私だと思う。



鏡に全身を映してチェックした後、


「はぁー…。」


私は大きく一つ、深呼吸をした。

それから荷物を手に取ると、


「行って来ます。」


ドアを開ける前からドキドキし始めている状態で、私は会社へと向かった。
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