海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「本日お約束をしていた…」


教室長と椎名先生が、校舎に入ってすぐの所にある、事務室の人と話している姿が視界に入るのだけれど、

私は全くそれどころではなくて、完全に目は泳ぎ、いつ相葉先生が現れるかと気が気じゃなかった。



『もう帰りたい!』


心の中で、既に100回位言っただろうか。




「河原先生、行きましょう。」

「はい…。」


無情にも、椎名先生に呼ばれた事で現実に引き戻された私は、事務員さんが出してくれたスリッパに足を通した。


教室長と椎名先生の後ろに隠れるように、私も続く。


向かう先は職員室だ。



ドクン…


ドクン…


ドクン…



『もう、本当に帰りたい…!』

今までの中で一番強く思った時、



コンコン



職員室のドアをノックして、教室長と椎名先生が中に入った。


二人が入ってすぐに、誰かが気付いてくれたのだろう。


そのまま教室長と椎名先生の二人が入り口で立ち話をしていた為、私は中に入らずに廊下で立ちすくんでいた。


入り口の扉が開いていても、私の前には教室長達が立ちはだかっている為、中の様子が分からない。


二人から3歩位下がった所にいた私が見た様子だと、とりあえずそこで待たされているようだった。


そして、二人は何度もお辞儀をしながら挨拶をしている。


挨拶をしている相手の姿は、壁に隠れていて見えない。



見えない…



見えないのだけれど、



「ここでは何なので、どうぞこちらへ…。」


そう言って、教室長達が話していた相手が私からも見える位置に移動した時、


その人は椎名先生と教室長の後ろに立つ、私へと視線を移した。
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