海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「先生、今日少し練習してもいーい?」


翌月には検定試験を控えていたからだろう。

放課後、準備室にいた私に数人の生徒さん達が声をかけてきた。


「いいよ!頑張ってね。」

「ありがとう!」


生徒さん達は快く承諾した私に礼を言うと、早速パソコン教室に入って席に着いた。


居残り練習をし始めた生徒さん達を見て、私は自分が学生だった頃を思い出していた。


『私もよく練習したなぁ…。』


そう、懐かしく感じていたから。


あの頃は自分がパソコン講師になるなんて、考えた事もなかった。


思いもよらない所から自分の道が切り開かれていったのだ。


私と同じように、彼女達にもまだどんな未来が訪れるか分からない。


“自分の納得がいく仕事が出来る人になって欲しい”


“ここで学んだ知識を少しでも生かせてもらえたらいいな”


そんな思いがいつか届くようにと願いを込めて、私は少しでも生徒さん達の力になろうと過ごしていた。



私は翌日の授業の準備と報告物をまとめ終えた後に、生徒さん達がいるパソコン教室に入って行った。


「こういう時はここから先に作って…」


「この問題の場合の考え方は…」


そんな風に、練習している生徒さん達一人一人の手元を見ながら、その子の癖や無駄な動作がないかをチェックしつつ、教えていった。


基本的にはあまり手助けしないように。

でも、本当に困っている時には私の方から手を差し伸べ、相手から来た質問にはすぐに答える。


これが私のやり方だった。



「先生、分かった!どうもありがとう!」


そう言ってくれた時の、生徒さんの喜ぶ表情を見るのが何よりも好きだったし、嬉しくも感じた。



「良かった、良かった。その調子だよ!」


そんな風に相槌を打ちながら、グルグルと順番に見回っていると、


「ねぇ、先生。どうやったら先生みたいになれるの?」


「え?」


突然、一人の生徒さんに訊ねられて、私は足を止めた。
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