海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「河原先生ありがとうございました。さようなら。」


そう言って、手を振りながらパソコン教室を出て行く生徒さん達を、


「さようなら、気を付けてね。」

「さようなら。」


私と相葉先生は一緒に見送った。



「すみませんでした、こんなに遅くなってしまって…。」


生徒さん達が出て行った後、すぐに相葉先生にお詫びすると、


「いや、いいんだ。河原がまだ帰っていない事に気付いて来てみたら、なんかいい話してたみたいだし。」


そう言って、相葉先生は優しく笑った。


「えー…どうでしょう。ははっ。」



『さっきの話、聞かれてたのか』

そう思った瞬間恥ずかしくなり、私は笑ってごまかしたけれど、


「椎名先生、河原の事を“熱い先生だ”って言ってたもんな。」

そう言って、相葉先生がいたずらな笑顔を浮かべて歩き始めたから、


「もう!」

私は先生の広い背中を、片手で軽く突いた。


すると相葉先生は足を止めて振り返り、


「ははは!ごめん、ごめん、冗談!けど、お前も学生の頃、ああやってよく居残りしてたよなぁ。」

と、穏やかな表情を浮かべていた。


「そうですね、さっき私も思い出していました。」

そう返事をしつつ、


『相葉先生、覚えててくれたんだ。』

と、嬉しく感じていた。



「本当に熱心だったもんな。毎日家で練習して、次の日に俺が添削して…。本当によく頑張ってたよな。」


私は記憶を辿っている相葉先生を見つめて、


「あの頃は本当にお世話になりました。」

と、頭を下げた。
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