海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
『!!』

突然の振られて、私は倒れてしまうかと思った。


全然心の準備が整っていない。


明らかに“えっ!?”っていう顔をしている私に、


「河原は…どこか分からない所があるのか?」


そう、相葉先生の方から聞いてきた。


真っ直ぐに私を見つめて、

いつも通りの優しい笑顔で、

いつも通りの穏やかな口調だった。



教科書や問題集を持っていなかった私は、


「あっ、今日はないです…。」


そう言いながら笑顔を作ったつもりだけど、きっと引きつっていたと思う。


それでも、これが私に出来る精一杯だったんだ。


「そうか。」


そう言って笑う相葉先生を見て、


「分からない所があったら、また教えて下さい。」


私が咄嗟にそう言うと、相葉先生は「おぅ。」と、言葉少なだけど優しい笑顔で答えてくれた。


分からない事を教えるのは、先生にとって“仕事”な訳だし、


嫌でも引き受けざるを得ない内容なんだろうけれど、


『また今まで通りに過ごせるのかな。』


そう思ったら、スーッと気持ちが楽になったのは確かだった。
< 64 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop