海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「大崎先生の車…?」


見てすぐに分かったんだ。

停まっている車が大崎志保先生の車だっていう事。


大崎先生は私のクラスの古典を担当していて、多くの女子生徒の憧れでもある人だ。


「なんで…。」


私は漕いでいた自転車を止めて、その場に立ち尽くした。


嫌な予感がしていた。


『今、大崎先生と一緒にいるのかもしれない。』


そう思うだけで胸が苦しい。


相葉先生にとって学校が休みの日に同僚と会う事は、全然珍しい事ではないのかもしれない。


『でも“ただの同僚”じゃなかったら…?』


そんな考えが過ぎった途端、不安が私の心を覆っていく。


私は新たな不安を抱いて、まるで逃げるように自分の家の方向へと自転車を漕ぎ、途中、コンビニに寄る事さえ忘れて家に帰った。



この日の晩、


『どうして相葉先生のアパートに大崎先生の車が停まっていたの?』


という“疑問”と、


『どうか大崎先生の車ではありませんように。』


という“願い”を何度も頭の中で繰り返し続けて、私はなかなか眠る事が出来なかった。
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