海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「もしもさくの予想通り、相葉先生と大崎先生が付き合っていたとしても、それでも相葉先生の事が好きなら無理に諦めなくてもいいと思う…。」


梢がためらいがちにそう言うと、瑞穂も頷いた。


「いいかなぁ、それでも…。」

私は力なく笑った。


実際、物凄く焦っていたけれど、それだけで諦めがつく訳が無かった。

相葉先生への想いは、そんな簡単なものじゃなかったから…。



そして放課後、私は瑞穂と梢に

「ちょっと行ってくる。」

そう告げると、勇気を振り絞って一人でパソコン教室に向かった。


パソコン教室まで歩く道程は、いつもより長く感じた。


“大崎先生と付き合ってるの?”


そんな風に質問攻めにしてしまう、爆弾を抱えているような気分。


尚且つ、久々に一人でパソコン教室に向かっているせいか、心臓がバクバクしていた。



コンコン


パソコン教室に着いて準備室のドアをノックしたけれど、中から声が聞こえてこない。


「…いない?」


『せっかく勇気を出してここまで来たのに空振りかぁ。』

ガックリと肩を落としながら引き返す事にした。



パソコン教室から校舎内の廊下に出るまでは、約5mの渡り廊下がある。


その渡り廊下の中にはちょっとした曲がり角があり、そこを曲がろうとした時だった。



「うわ!」

「わぁっ!」


ぶつかりそうになった私ともう一人が同時に声を上げた。


「…なんだ?なんか用か?」

「せ…先生…。」


見上げると相葉先生だった。


いつも冷静な相葉先生がちょっとだけ驚いた顔をしていて、私は思わず吹き出してしまった。


「うん、ちょっと簿記で分からない所があって。」

「そっか。」


相葉先生は照れ臭そうにフッと笑うと、私よりも先に準備室へ歩いていき、ガチャリと鍵を開けた。
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