海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「おはよう。」


クラスメイト達に声をかけながら教室に入った。


私の席の近くには梢と瑞穂の席があって、目が合った途端


「おはよう!」

二人が元気に声をかけてきた。


ちょうど、昨夜放送されていたテレビ番組の話をしていたらしい。


朝の女子校のHRまでのひと時は、教科書を忘れて借りに行く人がいたり、

バレない程度の化粧を頑張っていたり、

だけど沢山お喋りもしたくって、とても賑やかだ。


慌しい私達の教室に担任の先生が入ってきた。


朝のHRが始まる事を察して、それぞれが慌てて自分の席に戻っていく。


出欠を取り、連絡事項を私達に伝え終わると、さっさと先生は教室を出て行った。


1時間目は古典だった。


“教科ごとの担当の先生は誰か”


始まったばかりの学年は、ここが一番気になるところじゃないかと思う。

当然、


「誰が来るのかな。」

そんな風に、周りの友達と話している真っ最中に、

ガラッ!と音を立てて教室の戸が開いた。


カツカツとヒールの音を響かせながら入ってきたのは、今日から私達の古典の授業を担当する先生だった。


大崎志保先生。

年齢は29歳で、独身。
担当は国語。

親が大きな会社を経営している、裕福な家のお嬢様。


特別美人ではないけれど、気さくで上品な雰囲気があって、女性として密かに憧れている生徒が沢山いた。


私が大崎先生の授業を受けるのは、入学して以来、初めての事だった。


授業が進むにつれて

『憧れる気持ちが分かる。』

素直にそう思った。


授業内容が分かりやすいのはもちろん、ニコニコした表情に、明るい話し方。


スタイルも良くて、お洒落な人だった。


私は元々国語が好きだった事もあって、最初に授業を受けたこの時からこの時間が楽しみになった。
< 7 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop