海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
パタン…


準備室のドアを閉た途端、私の口から溜め息が零れた。


緊張の糸が、プツンと切れたような感じがしたからだった。


結局、本当に聞きたかった事は怖くて聞けなかった。


真っ直ぐに私を見つめた、相葉先生の瞳に負けちゃったんだ。


もしもその答えが私の予想通りだったとしたら、きっと今の私にはキツイだろう。


今はこれ以上、傷付きたくなかった。


本当に。


だけどその日の夕方、相葉先生に聞くまでも無く、私は真実を突き止めたんだ。


家に帰る途中、回り道をして相葉先生のアパートの前を通ってみた。


どうして私はこの日回り道をしたんだろう。


もしかしたら、何か胸騒ぎがしていたのかもしれない。


相葉先生のアパートには、また大崎先生の車が停まっていた。


まだ学校にいる相葉先生の車は、当然だけど無かった。


私は二人が付き合っている事を確信した。



大崎先生は裕福な実家で両親と一緒に住んでいて、住所は全く違う。

全くこのアパートには関係がないのだ。


なのにこうして通っているという事は、誰かを訪ねて来ているとしか思えない。


そしてその誰かは間違いなく相葉先生。


しかも相葉先生がいないのにアパートに入れるという事は、きっと大崎先生が合鍵を持っているからで…


それは、二人が付き合ってるからだとしか思えなかった。


本人に確認するまでもない事だと思った。


私は唇を噛み締めて相葉先生のアパートに背を向けると、今まで歩いてきた道を再び歩き出した。


結果的にまた傷付いた。

傷付きたくなかった。

知らない方が、幸せだったのかもしれない。

だけど私はこの時、


『大崎先生には負けない。』


そんな想いが、心の中に芽生えたんだ…。
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