海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「疲れたねー。」


夕食を終えた後、同室の子達はそう言いながらホテルの部屋でゴロンと横になった。


さすがに連日歩き回ると楽しいけれど疲れる。


「本当、疲れたぁ。」


同じように私も仰向けで横になりながら、今日買った縁結びのお守りを天井に向けて眺めると、灯りに照らされたお守りの縁だけがキラキラと光っていた。


『相葉先生も大崎先生とお揃いのお守りを買ったのかな…。』


そんな事がふいに頭を過ぎる。


修学旅行が始まってから、大崎先生の事を思い出すなんて殆ど無かったのに、不思議な程、急に思い出してしまった。


勝手に思い出して、勝手に不安になる。


相葉先生の事を好きになってから、ずっと続いている私の一喜一憂。


片想い特有のものなのかもしれないけれど、自分の気持ちに振り回されているのは確かだし、何より、苦しかった。


「明日は自由行動だね。」

「そうだね。」


瑞穂の一言に、梢と私はほぼ同時に返事をした。


お寺巡りもいいけれど、やっぱり自由行動が楽しみだった。


「お昼何食べよう?湯豆腐?」


夕飯を済ませたばかりなのに、もう明日の昼食の事を考える。


そうかと思えば、しおりを広げて楽しみにしている場所を確認し、この日、瑞穂が選んだ“凶”のおみくじの数で笑う。


私達の話題が変わっていくのは早く、そんな楽しいお喋りのおかげで私の不安は紛れていった。
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