いちごのきもち
§14:しのぎを削るとは
セオリー大好き、定石大好き、イベント大好き、
私の宿敵、高梨愛美が、今回の野外キャンプで
あの人に告白しようとしている。
もちろん、愛の告白だ。
「なんか、すごいよね、高梨さんって」
学校からの帰り道、紗里奈がつぶやいた。
「……」
すごい、たしかにすごい。
あの二人は、仲がいい。
愛美が、あの人のことを好きなんだっていうことは
きららの言う通り、誰にでも見てりゃわかる。
でも、大希くんは?
極端に嫌がる風でもなければ
かといって、あからさまに、いちゃついてるわけでもない。
愛美が告白したとして、はたして勝算は??
五分五分だ。
「本当に、キャンプの時に、告白するのかな」
告白してどうする?
上手くいけば、つき合う?
そもそも、つき合うって、なんだ。
『私、あなたのことが好き』
『俺も』
で? その先は?
手をつないで帰る? デートする?
エッチなことは、まぁちょっと置いておいて
なにするんだ。
「上手くいくったら、つき合うのかな」
性欲が目的で近づいてるわけじゃないんだし、
じゃあ、つき合い始めたところで
高校生同士、なにが今と変わる?
どれだけ脳内シミュレートしても
なにも変わらない。
「うまく、いけばいいのにね」
うまくいく?
上手くいったら、あの二人は、
『彼氏』と『彼女』という、
一種のシールドを、周囲から身にまとうことになる。
そんな強固な防御壁を作られる前に、
なんとかしなければ。
「ねー、頑張ってほしいよねー」
ん? なんとか??
なんとかって、
私はなにをするつもりなんだ??
「みなみも、そう思うでしょ」
「……」
どうやって、邪魔をしよう。
邪魔? なんで私が邪魔するの?
邪魔する必要、ある??
てか、こういう場合、した方がいいのか??
しかし、どうやって?
「なに、全然、興味なし?」
「いや、自分だったら、
どうするかなーと思って」
紗里奈が笑った。
「なに? みなみも、告白すんの?」
「は? 私??」
……もし、もし私が……
私がもし、あの人に告白したとして
上手くいく見込みは……
間違いなく、永遠のゼロ。
そんなものに、私のこの、あの人への思いを
かけるわけにはいかない。
ゼロに、いくらかけても、ゼロはゼロ。
ゼロゼロゼロゼロゼロゼロ……
「勇気、あるよね」
紗里奈は、そうやって私の宿敵、高梨愛美をほめる。
「ほんとだね、勇気、あるよね」
自分には、決して出来ないなにかを
高梨愛美は、やろうとしている。
「すごい、よね」
「うん」
なんだよそれ、結局私は
負け犬のまま変わらないんだ。
負け犬で迎える夏
夏なんて、こなければいいのに。
私の宿敵、高梨愛美が、今回の野外キャンプで
あの人に告白しようとしている。
もちろん、愛の告白だ。
「なんか、すごいよね、高梨さんって」
学校からの帰り道、紗里奈がつぶやいた。
「……」
すごい、たしかにすごい。
あの二人は、仲がいい。
愛美が、あの人のことを好きなんだっていうことは
きららの言う通り、誰にでも見てりゃわかる。
でも、大希くんは?
極端に嫌がる風でもなければ
かといって、あからさまに、いちゃついてるわけでもない。
愛美が告白したとして、はたして勝算は??
五分五分だ。
「本当に、キャンプの時に、告白するのかな」
告白してどうする?
上手くいけば、つき合う?
そもそも、つき合うって、なんだ。
『私、あなたのことが好き』
『俺も』
で? その先は?
手をつないで帰る? デートする?
エッチなことは、まぁちょっと置いておいて
なにするんだ。
「上手くいくったら、つき合うのかな」
性欲が目的で近づいてるわけじゃないんだし、
じゃあ、つき合い始めたところで
高校生同士、なにが今と変わる?
どれだけ脳内シミュレートしても
なにも変わらない。
「うまく、いけばいいのにね」
うまくいく?
上手くいったら、あの二人は、
『彼氏』と『彼女』という、
一種のシールドを、周囲から身にまとうことになる。
そんな強固な防御壁を作られる前に、
なんとかしなければ。
「ねー、頑張ってほしいよねー」
ん? なんとか??
なんとかって、
私はなにをするつもりなんだ??
「みなみも、そう思うでしょ」
「……」
どうやって、邪魔をしよう。
邪魔? なんで私が邪魔するの?
邪魔する必要、ある??
てか、こういう場合、した方がいいのか??
しかし、どうやって?
「なに、全然、興味なし?」
「いや、自分だったら、
どうするかなーと思って」
紗里奈が笑った。
「なに? みなみも、告白すんの?」
「は? 私??」
……もし、もし私が……
私がもし、あの人に告白したとして
上手くいく見込みは……
間違いなく、永遠のゼロ。
そんなものに、私のこの、あの人への思いを
かけるわけにはいかない。
ゼロに、いくらかけても、ゼロはゼロ。
ゼロゼロゼロゼロゼロゼロ……
「勇気、あるよね」
紗里奈は、そうやって私の宿敵、高梨愛美をほめる。
「ほんとだね、勇気、あるよね」
自分には、決して出来ないなにかを
高梨愛美は、やろうとしている。
「すごい、よね」
「うん」
なんだよそれ、結局私は
負け犬のまま変わらないんだ。
負け犬で迎える夏
夏なんて、こなければいいのに。