いちごのきもち
§28:比重の単位

私は、あの人のことが好き。
その気持ちは、誰にも、絶対に負けない。

そのつもりだった

だけど、愛美は違う。
愛美は、あの人と戦っている。

私が、あの人のことを好きな気持ちよりも
愛美が、あの人のことを好きな気持ちの方が
大きかったみたい。

私は、何もしてない

ただ、見てただけ、だた、妄想していただけ。
あの人に向かって、実際に手を伸ばしたことは
一度だって、ない。

そうなりたいと願うなら、
そうしたいと思うのならば、
本当は私も、何かをしなければならないのだ。

それが出来ない私に、愛美に勝てるはずがない。
愛美が苦しんでいるのを、もがいているのを、
見ている資格はない。

私には、決して出来ないことを
愛美はやっている。
それだけで、充分だ。

私よりも、強い気持ちで臨んでいる愛美が
あの人と上手くいかないなんて
考えられない。
そんなこと、ありえない。

だって、私以上に
愛美はあの人のことが、大好きなんだよ?

おかしい、絶対におかしいじゃないか。
うまくいってて、当然のはずなのに、
そうじゃないなんて、そんなの
ウソだ。

私は、自分があの人にふられることよりも、
愛美があの人からふられることの方が
怖い。

お願いだから、ずっと幸せなままでいて。
別れるのなら、愛美からあの人をふって、
あの人に飽きるか、別の男とつき合って。
いつまでも、悪い女のままでいて、
私まで、傷つけないで。

つき合ってるのが、愛美じゃなくて、
私とだったら、どうなってたの?


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