To be alive again

「つーかお前、俺の名前…
あぁ、お前の家で言ったか」

・・・え?そこ?ときょとんとしてしまう。

「…名前くらい知ってたよ、前から…」

「なんで?」

言ったことなかったよな?と彼の顔には書いてあって、翠は少し気まずくなって視線を泳がせた。

高校時代、彼に名前を聞いたことがあった。

返ってきた返事は「教師の名前なんて苗字知ってりゃ十分だ」とドライ極まりなくて。

それ以来、面と向かって名前を聞く機会も無かった。

結局、卒業アルバムをもらった時に真っ先に彼の名前を見た。

確かによーく考えてみたら、彼の口からフルネームを聞いたのは…この間、翠の実家で親に軽くあいさつしたときに一度きり、それだけだ。

あまりにもあっさりとにこやかに『結婚を前提にお付き合いさせていただいています』なんていうから、多分親より翠のほうが面食らってたと思う。
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