To be alive again
「お前、毎日来てたしなー…
しかも物理履修すらしてないし。
いい顔はされなかったと思うぞ。
今考えても、上手い言い訳なんて一つも思いつかないし」
確かに担任でもなければ、教科担任でもない。
翠が物理実験準備室に居ることについて、学校側に話せる様な理由は何一つなかった。
ごくごく最初の頃は、逃げ場にしていたけれど、落ち着いてからは真一郎と一緒に居たかったから行っていただけだった。
時々、揺り返しのように落ち込んだその時に真一郎が側に居てくれる、それだけで安心したから。
それが、翠が真一郎に会いに行く理由だった。
「何もしてなくても、居るだけで微妙なんだよな。
異性の生徒と密室は避けろってお達し出てっから。
進路指導室もドア開けて話せとか言うから結局誰も使ってねーよ。
めんどくせーから全部職員室で済ましてるわ」
そんな事を上から言われているんだ、とむしろ感心してしまう。
「つーか、今生徒となんかするなら、進路指導室穴場だな」
そんなつぶやきに、えぇーと不満たっぷりに真一郎を見上げてしまった翠だった。