To be alive again

「…言ってない、誰にも。
あの頃バレても絶対に言わなかっただろな」

くしゃくしゃと髪をなでる手と、告げられた言葉に安堵の吐息を漏らして、きゅっと唇を噛んだ。

真一郎の所に、翠が行くようになった理由。
辛くて悲しい、だけど二人を結びつける、真一郎が誰にも言わずに守ってくれた翠の秘密。

「ね、先生」

真上を見上げると、真一郎の大きな手が頬を包み込んでくれる。

眼鏡の奥の瞳を見つめて、意を決するように一息ついた。

「なんだ?」

「先生は…あの頃も、付き合ってもいいと思ってた?」
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