To be alive again
「母さんとこ、先に行ってくる」
混んでいる店に視線を走らせて、弟はそういって傍らの彼女を連れて勝手口から出て行った。
「…なにあの可愛い子」
思わず口をついて出ていたその言葉に、傍らに居た夫が小さく笑う。
「言ったろ?可愛いの連れてきたって」
二週間程前の土曜日の昼間、渚が店に居ない間に弟は彼女を連れて店に来たらしい。
店に居たのは夫と父だけ。
「思ってたよりだいぶ可愛かったからびっくりした」
「いや、そーとー可愛いか好みじゃなきゃあいつ生徒に手出さないだろ」
言われた言葉に呆れつつもどこか納得する。
確かに弟は見境無く手を出すタイプじゃない。