To be alive again
案内されたのは家の奥の和室、仏壇のある部屋。
「ただいま」
真一郎が静かに声に出す。
慣れた手つきでマッチで蝋燭に火を灯して、翠を振り返って、視線で写真を示す。
「…うちの母親、な」
ほのかに揺らめく蝋燭の焔に照らされた写真の中のその人は、にこやかで優しそうだった。
先生は、お父さん似なのかな?
でも、翠の実家で親と話しているのを思い出すと、やっぱりお母さんにも似ているのかもしれない。
どんな表情で、話す人だったんだろう。
写真の中の笑顔は本当に優しそうで、こう言っては何だけど、毒舌の真一郎と結びつかなかった。
「母さん、北川 翠 さん」
とってつけたような“さん”に真一郎も翠も思わず小さく笑ってしまった。
「笑うなよ」
「だって」
「ったく。
結婚、しようと思ってるから、翠の事も、よろしく」
「よろしくおねがいします」
二人とも笑ってしまったせいでどこか締まらないあいさつをして、お線香を上げた。