To be alive again

案内されたのは家の奥の和室、仏壇のある部屋。

「ただいま」

真一郎が静かに声に出す。

慣れた手つきでマッチで蝋燭に火を灯して、翠を振り返って、視線で写真を示す。

「…うちの母親、な」

ほのかに揺らめく蝋燭の焔に照らされた写真の中のその人は、にこやかで優しそうだった。

先生は、お父さん似なのかな?

でも、翠の実家で親と話しているのを思い出すと、やっぱりお母さんにも似ているのかもしれない。

どんな表情で、話す人だったんだろう。

写真の中の笑顔は本当に優しそうで、こう言っては何だけど、毒舌の真一郎と結びつかなかった。

「母さん、北川 翠 さん」

とってつけたような“さん”に真一郎も翠も思わず小さく笑ってしまった。

「笑うなよ」

「だって」

「ったく。
結婚、しようと思ってるから、翠の事も、よろしく」

「よろしくおねがいします」

二人とも笑ってしまったせいでどこか締まらないあいさつをして、お線香を上げた。
< 82 / 97 >

この作品をシェア

pagetop