To be alive again
「さ、行くかな」
こんなにあっさり?と真一郎を見上げると、真一郎はクスッと笑う。
「大丈夫、多分ここに居ないから。
居るとしたら…店に居る」
「お母さん、お店好きだったの?」
「ん、最後に倒れたのも、店だったし。
…最後までずっと、働きたいって言ってる人だったから」
だから、今も…居るとしたら家じゃなく店に居るはずだと、写真の母親に少し寂しげな眼差しを投げた。
「まぁ、おかげで散々こき使われたけどな。
母さんの入院中や、渚が妊娠中のときの穴埋めとかさ」
そう言葉では言うのに、真一郎の声音も眼差しも、優しい。
翠はぎゅっと真一郎の手を握った。
本当に、優しいのに、素直じゃない人。
「先生、ありがとう」
ちゃんとお母さんに会わせてくれて、ありがとう。