Only Three Months
prologue
「…マイク、マイクってば!」
「何だよ、そんな大声で呼ばなくても聞こえてる」
「返事くれないマイクが悪い!」


一緒に登校してきて、散々しゃべってたのに、まだ話したいのか。
エドワード(エド)・ケリーは基本的にこんな感じのハイテンション。
オレのローテンションを見事に無視してくる。


「来週、お姫様が学校に来るんだって!」
「アリシア・バイオレット?」
「他に誰がいるの!?」


朝一登校してから、聞いたんだろうな。
そうじゃなかったら、登校中に聞かされてるだろうから。


「交流会で、ひとりだけお姫様と一緒に踊れるんだって!」
「へぇ」
「つれないねぇ」
「王族に興味ないの知ってるだろ?」
「目の前で見たら変わるかもしれないよ?」
「どうだか」


姫が学校に来るからって、そんなに騒ぐことか?
確かに、庶民階級の区域に王族が来るのは珍しいけど。

オレは、純粋に喜べない。
王族が、嫌いだから。


  ☆


「みなさん、席に着いてください」


担任が来て、SHRが始まる。
教室が静まるのが速すぎて、ビビる。
そんなに教師からの正式発表を聞きたいのかよ。


「来週の土曜日、アリシア・バイオレット様が訪問してくださいます」


オレたちが生活している、ヴィクトリア王国の唯一の王位継承者。
そんな人が庶民学校、ピンポイントでこの学校に来る。

同じ人間なのに、もてはやされるんだな。
位の差って、なんで存在するんだろうな。


「交流会の一貫として、ダンスパーティーが予定されています。
 お姫様ご本人からのご好意で、ひとりだけお姫様の手を取り踊ることができます」


メガネをかけたおとなしい男子ですらガッツポーズ。
本当に踊れるかどうかも分からないのにな。

王族なんて、自分のしたいようにするだけだろ?
下級階層のことなんて考えてない。

当日、姫が踊りたくないと言えば、そうなるだろうし、
来たくないと言えば、交流会自体がなくなる可能性だってある。 

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