Only Three Months
「どうしてそのようなことを庶民の僕におっしゃるのです?」
「階級が違うからこそ言えるの」


ますます意味が分からない。
勉強でもここまで混乱することはなかったのに。


「あと、わたし敬語嫌いなの。
 普通に話して。
 私にとって、執事にも声が聞こえないこのひとときだけが、
 自由に物を言える時間なんだから」


ここはもう割り切って、遠慮せずに話すべきか。
姫がそれを求めてるんだもんな。


「…それを聞いて、オレにどうしろと?」


本当にタメ口で話したら、姫は動揺してワンテンポ遅れた。
そこはオレがフォローする。
そのまま踊れば姫が恥をかくし、それがオレのせいになる。


「ありがとう」
「え」
「今フォローしてくれたでしょ」
「ああ…」


思ってた姫と全然違って、調子が狂う。
“目の前で見たら変わるかもよ?”
そんなエドの言葉が蘇る。


「マイクには、私の話を聞いていて欲しいだけ。
 それだけで楽になれるから。
 マイクみたいな、王族を崇拝しない人もいるんだって思えるから」


さっきから、まともに会話できない。
確かに崇拝してないし、好きでもない。
だからって、それをそのまま伝えていいわけない。
いくら同じ人間だって、階級が存在するんだから。


「困らせてごめんなさい。
 褒めているのよ」
「それはどうも」


どうやら、本当に相槌程度でいいらしい。
ずっと話したがる人は近くにいるし、扱いには慣れてる。


「国民はみんな、私たちを崇めるような目で見てくるの。
 階級が下がるほどその傾向は強くて。
 私はそれが嫌なの。
 生まれる階級なんて、選べないのに」


…その通り。
階級を選んでこの世に生を享けることはできない。



「私とみんなは同じってことを知ってほしいの。
 私だってひとりの人間で、ミスだってするの。
 もっとみんなと話したいの」


オレが思っていたより、ずっと考えが近い。
国王のイメージが悪すぎて、姫もああいう人だと決めつけてた。

< 10 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop