Only Three Months
「ダンが体調を崩していることは城中の誰もが知っていた。
 知らなかったのは、マイクとエドだけだった。
 ダンが知らせたがらなかったからだ。
 逆に、大人には言わざるを得なかった」


子どもは知らなくていいって考えじゃなかったのは分かる。
日記から、父親の性格はそれなりに理解したつもりだ。
すでに母親がいなかったオレへの配慮だろう。


「ダンが弱っていたことは、報道もされていて、記者からふたりを隠すのに苦労した時期でもある。
 私たち親族と貴族、使用人たちが一番気を遣うように言われていた点だ。
 マイクとエドを、意図せずに公にしてはいけないと、常々言われていた」
「なぜですか?
 王族ですから、ほぼ不可能では?」
「マイクもエドも、アルバートの王族・貴族として生きるのが決まっていた。
 幼い頃だけでも公的な身分を意識して欲しくなかったんだろうと私は思っている。
 学校へ行き始めたら、何でも記事になるから」


納得できるように答えが聞ける。
サーも、この時間が来ることを知っていて、準備していたのかもしれない。


「ダンは、亡くなる1週間ほど前からはベットを出ることができなかった。
 面会は制限され、私は許可されていた人間だ」
「ほかには?」
「エドの両親も、この期間に面会をしている」
「オレの両親?」
「父親が亡くなったあと、オレの世話をするため」
「その通りだ、マイク。
 ダンには、ふたりのその後の生活が見えていたようだ。
 私はてっきり、例外的にマイクが即位すると思っていた」


サーが、唇を一度固く閉じて、また開く。


「…順を追って話そう。
 私に与えられた命は、マイクへの手紙を預かることと、ヴィクトリアの姫を守ることだ」
「アリーを?」
「そうだ」


サーは大きくうなずいて、また話してくれる。
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