Only Three Months
「…少し余談ですが、僕は、父親の影響で、城の周りの森が好きなんです。
 月明かりの中、静かな森を散歩して、城の明かりで日記を書く。
 これが僕の習慣でした」


国王の顔が強張る。
夜の森を歩いている人なんて、いないと思っていたんだろう。


「交流会の日の夜、イメージと違った姫の姿に混乱しながら、いつも通り歩いていました」
「まだ話を続ける気か?」


国王が、オレの話を止めた。
報告を始めてから、ずっと王妃を見ていたけど、国王に視線を向ける。
意識的に睨み付ける。
アリーを、苦しめてた根源。


「自分がどこで何を話しているのか、分かっているのか」
「はい、分かっています」


アリーと王妃が味方だ。
それを信じて、国王から目を逸らさなかった。

ヴィクトリア城のホールで、オレが話そうとしている話。
国王にはこれからオレが話す話が分かってるんだ。
だから、もうこれ以上話させようとしない。


「あなた、どうしてマイケルのお話をそんなにも聞きたがらないのです?」
「たかが一庶民の話だ。
 こうして貴族たちも集まっている場で、聞く必要があるか?」
「せっかくの機会です。
 アリシアがこの城の外で何を学んだのか、教えてくださる方がいるのですよ。
 それに、アリシアは自分でマイケルから離れられるのに、私たちの方へ戻ってこない。
 アリシアがマイケルを信頼しているのは明らかです」


国王と王妃の言い合いに、貴族たちがざわつき始める。
庶民のオレからすると、報道では絶対に流れない場面に遭遇しているんだなと思う。
日常的に、国王と王妃は対立しているのかもしれない。
そう思わせる状況。


「今、目の前に居る庶民が、誘拐犯ではないと言い切れるのか?」
「マイクは私を誘拐なんてしていないわ」


国王にとっては、庶民は誰でも姫の誘拐犯なんだろうな。
オレが庶民だからって理由で、もう逮捕したいんだろ。

アリーが、父親に刃向かった。
オレの肩に顔を埋めてると思ってたけど、いつの間にか自分の父親に向き直ってた。
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