Only Three Months
「…上から声が聞こえてきたんです。
 女性の叫び声と、複数の男性がそれをなだめている声。
 女性は、『嫌、離して』と抵抗していて、男性は『いつもと同じ、気持ちよくなるだけだから』と」


こんなにも不機嫌な態度を隠さない国王。
取り繕うことを止めて、オレの話を聞いてくれる王妃。
このふたりは、今貴族たちにどう映っている?


「…マイケル、私たちの顔色を伺う必要はないわ。
 アリシアの態度を見る限り、私があなたを牢屋に入れることはないのですから」


王妃に頷いて、また話を続ける。


「その声を聞いたすぐ後に、何かが落ちる音がしたんです。
 それから、『この高さから落ちて動けるはずがない、捜索は明日だ』という声も。
 報道で聞き慣れた声でした」


オレの腕の中にまた収まったアリーは、必死で泣かないように我慢してる。
震えてるのが伝わってくる。


「声が遠ざかってから、何が落ちたのかを確認したんです。
 近寄ってみると、アリシア姫でした。
 ビリビリに引き裂かれたネグリジェを着て、体に傷をたくさん作っていました」


王妃の顔はみるみる険しくなって、国王の顔も厳しくなる。
国王はもう、何も行動を起こそうとしない。

オレの話を聞いたところで、信じる人なんていないとでも思っているのだろうか。
一庶民の話など、誰も信じないと思っているのだろうか。

さっきからずっとオレにすがっているアリー。
オレに対する国王と王妃の態度の差。
貴族たちが常識を持ち合わせていることを願うばかりだ。
オレなんかよりもずっと国王に近いところにいた人たちだから、きっと国王の本性に気付いていたはず。


「僕は、そんな様子だった姫を放ってはおけず、家に連れて帰ったんです。
 姫から事情を聞くと、オレが聞いた声や姫の格好から連想したものと一致していました」
「つまり…」


王妃が言葉に詰まる。
オレも、その単語を言いたくはない。
それでも、言わないといけない。
アリーが、それを望んでるんだ。
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