Only Three Months
「姫は国王や世話係の相手をさせられていた。
 姫として必要なことだから、プロポーションのためと言われて、幼い頃からずっと」


…性的虐待とかレイプとか、そんな言葉はさすがに使えなかった。
どういうことをされていたのか、伝わればそれでいい。


「そんなことがあるわけないだろう。
 一庶民の作り話を聞くほど、私たちに暇はない」


その国王の言葉に、オレの中で何かが切れた。
抑えていた感情が、一気に流れ出る。


「あれだけオレに離されたらマズイ、みたいな反応しておいて、今更その態度はないだろ。
 もっと詳しいことまでオレはアリーから聞いてるんだ」
「マイク…」


今まで近くに座っていたはずのエドが、オレに声を掛ける。
でもオレは止まれなかった。


「アリーが余計なことを話すと面倒だからと、王妃に週に1度しか会えなかったこと。
 毎日男の世話係が風呂に付き添ってくること。
 国民のことを分かりたいからって履修した庶民学も、国王には反対されたこと。
 オレの感覚からするとおかしいんだよ」


王妃が頷きながら聞いてくれる。


「王族の中に気軽に話せる人がいなかったから、アリーはオレに話してくれた。
 オレが王族から遠い庶民で、しかもオレは一人暮らし。
 他の誰に話すことも聞かれることもなかったから」


少しの間、沈黙があった。
国王も、何も言わない。

貴族たちも何を言わない。
国王とオレ、どっちが正しいことを言っているのかの判断は、貴族にもつくと思いたい。

今まで国王のことを正しいと信じてきた人ももちろんいるだろう。
逆に、オレみたく国王がおかしいと思っていた人もいると信じたい。


「…アリシア」
「はい、お母様」


アリーがオレの手を握ったまま王妃に顔を見せる。
明らかに、少し泣いた後の表情。


「マイケルの言うことを否定しないのね?
 本当に、この城であったことなのね?」
「ええ、マイクは何も間違ったことや嘘を言っていないわ」
< 125 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop