Only Three Months
土で汚れている肌を、できるだけ軽く拭いていく。
拭くくらいだと、そこまで痛くはなさそうだ。

下着姿の姫の肌をまじまじと見てしまう。
痣だけじゃなかった。
なんでこんなにたくさん切り傷が身体にあるんだ?

ゆっくりと、用意したスウェットを着てもらって。
疲れ切った感じの、姫。


「…寝転ぶ?」
「大丈夫」
「アップルティー、飲む?」
「うん」


寝転んだ方が楽なのかと思ったけど、そうでもないのか?
そもそも他人の家だから?

落ち着くには、何か飲むのがいい。
オレの家には、アップルティーしかない。
オレしか住んでなくて、オレがアップルティー好きだから。


クッキーと一緒に運ぶ。
姫に、オレが普段口にしてるような物を渡していいんだろうか。
…ダメだろうな。


「気にしてくれなくていいのに」
「目の前にいるのはお姫様ですから」


姫だからというより、女の子がこんな状態になってるとかおかしいだろ?
こんな状況を、放っておけないし。

姫は、アップルティーを一口すすって。


「そんな風に言わないでよ」
「ごめん」


姫が、オレの思うような嫌な王族じゃないのを知って。
城で何が起きてるのかは分からないけど、帰せない。

姫とは、確かに身分差があるけど、対等に話せる。
交流会で姫が望んだこと。

オレ自身もアップルティーを飲みながら、姫の表情を見る。
報道される姫とは明らかに違う。
こんなに悲しそうな姫は初めて見る。


「…泣きたかったら、泣いていいよ」


城の中で何があったのか、聞きたい気持ちを抑える。
こんな表情の姫を、どうにかしてあげたい。

泣きたくても泣けない経験は、嫌ほどある。
男でも、泣きたい瞬間はあるし。

でも、泣いたところで余計自分が情けなくなって。
一人暮らしだし、誰も慰めてはくれない。
いつの間にか、泣くのを止めてしまった。

姫の真横に座り直して、背中をさすってあげる。
何もしないでいるのが嫌だった。
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