Only Three Months
姫は、涙を隠そうとはしなかった。
流れるままに、声を出さずに。
俯いた姫の頬を包むように、親指で拭ってやる。

どれくらい経っただろう。
アップルティーはとっくに冷えてしまって。
姫の目も頬も赤くて。


「…優しいんだね」
「言われたことないけど」


正確には、エド以外の人に言われたことがない。
なんか、エドはもう付き合いが長すぎるから、
褒められても嬉しくもなんともないけど。
姫に、褒められるってやっぱり光栄だ。


「…お願い、聞いてくれる?」
「物による」


“城に連れて行って”とか言うなら、断固拒否。
何されてるのか確信を持ったわけじゃないけど、
こんな肌見てしまって、帰せるわけがない。

そんな肌に、城でされてるんだろ?
一国の姫が、城の外で肌の多くを見せることは少ない。


「私を泊めて?」
「もちろん」


当然。
言われなくてもそうするつもりだった。
帰す気がないから。

とりあえず、しばらくは姫がオレの家にいる。


「もうひとつ」
「ん?」
「明日、私の話を聞いて欲しい」


姫からの話。
わざわざ前置きを置くような話。

城の内部で何が起こっていたのか、話してくれるんだろうか。
オレに、話して大丈夫な話なのか?
庶民階級のオレに?

オレに話したところで、できることはほとんどない。
それを分かった上で、話すんだな。
交流会でも言ってたけど、話すだけで気が楽になるなら。


「…分かった」


姫にベットに入ってもらう。


「マイクは?」
「シャワーしてくる。
 先に寝てて」


たぶん、寝ないだろうな。
普段ですら10分かからないシャワーを、さらに短く済ませる。
姫が、待ってる気がしたから。
< 15 / 133 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop