Only Three Months
「誘拐以外に考えられることはほぼないですね」
「姫様は、何者かに誘拐されたと」
「その可能性が極めて高いです」


専門家とアナウンサーのやり取り。
姫が、顔をしかめてる。


「その理由とは、どういったものでしょう」
「まず前提として、姫様がおひとりで外出することはありません。
 必ず執事と警備がつきます」

「その通り、間違ってないわ」


オレに解説するように、姫が隣でテレビの情報を肯定する。


「それから、王族のプライベートな空間に入ることの人間は限られています。
 王家に仕える人間というのは、代々受け継がれていることがほとんどですので、
 そういった人間が城の外へ姫様を連れ出すことも考えにくいのです。
 城の外を見たことがない人間である可能性が高いので」
「と言いますと」
「城の内部の人間が姫様を連れ出したとしても、
 その人間が城の外部で生活することは難しいでしょう。
 城での生活は遮断されていますので、
 一般の国民と同じように生活するのは難しいはずです」

「…そうね」


オレがいなかったら、姫はどうなっていたんだろう。
城に連れ戻されて、ずっと国王や世話係の相手になるしかなかったんだろうか。


「ですから、姫様と生活を共にしている人間がいると考えるのがスムーズなんです。
 城の外で生活している人間が、姫様を誘拐したと」

「まさにそうね…っ」


姫が、いきなりオレの方を見る。
驚いたような表情。

“どうした?”と聞く前に、姫がテレビに向き直った。
専門家が、新しいことを話したから。


「ただし、誘拐とするには奇妙な点もあります」
「そうなんですか」
「そもそも姫様はひとりで城の外に出られないのに、どうやって外に出たのでしょう?
 また、身代金などの要求が、現時点でないことも奇妙です。
 王族、しかも王位継承者を誘拐するという極めて重罪を犯しておきながら、
 国王様に対して何も要求してこない。
 これが、今回の事件の不可解なところです」
「解説ありがとうございました。
 続きまして、現在の捜索状況について、報告していただきます」


オレが聞きたかったのは、ここから先の報道。
捜査が、どうなっているのか。
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