Only Three Months
姫の手がオレの背中に回って、力が入ってくる。
姫の立場でも、変えられないものは変えられないし、
あの国王に歯向かえば、もっと残酷なのが待ってるだろうし。


「…ありがとう」


そう言った姫に、返事をしなかった。
オレはこうして姫と今一緒にいることしかできない。
結局は、姫は城に帰ってしまう。
見つからないことなんて、ないと思う。

警察と軍隊が動いてるんだ。
庶民にまで捜査の手が伸びれば、
いくら姫を家に閉じ込めていても見つかってしまうだろう。


「…マイク」
「ん?」


姫が顔を上げた。
何かを決めたような表情。


「私のこと、アリーって呼んで」
「アリー?」


愛称で呼んでってこと?
“姫”のことを、庶民のオレが?


「お母様が私をそう呼ぶの。
 城の中で会えたのは、週に一度だけだったけど」
「そんなに会ってなかったのか」
「会わせてもらえなかったの。
 お母様の考えは国のためにならないって」


誰がそうしたのかは、言われなくても分かる。
母親がいるのに会えないのか。


「それに、頻繁に会ったら
 私の様子がおかしいのにも気づかれてしまうから」


これは、たぶん姫の意見。
国王が、姫を王妃に近づけたくなかった理由の推測。

母親って、細かいところにまで気が付くイメージ。
あくまでも、オレが知ってる母親はエドの母親だけど。
エドは、母親のことをオレ以外で一番いい相談相手って言ってた。


「でも、なんでオレにアリーって呼んでほしいんだ?」
「マイクに『姫』扱いされたくないから」
「別にしてないだろ」
「『姫』って呼ぶじゃない」


…まぁ、確かに。
でも、アリシアってさすがに呼べない。


「それにね、アリーって呼ばれると安心するから」


安心感か。
姫がそうしてほしいって言うなら、そうしてあげたい。


「分かった」
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