Only Three Months
「オレみたいな変人選ぶ姫だったら、この国の将来を疑うね」
「別にマイクは変じゃないでしょ」
「いや十分おかしいだろ。
 そもそも正装してきてないし」
「おかしいとは思ってるんだ」
「普通とは違ってる自覚はある」


王族に興味がないとはいえ、オレが住んでる国の政治をやってる人間が王族だ。
この国を治めてる人間がどんな人なのか、知っておいてもいいはず。


  ☆


会場が暗転して、ざわめきが大きくなって静まる。


「お集まりの皆様、お待たせ致しました。
 ヴィクトリア王国の王位継承者、アリシア・バイオレット様のご登場です」


拍手の中、執事と思われる男性に先導されて、入ってくる。
この会場の誰よりも、着飾ってる姫。
庶民のオレたちが、王族をこんな近距離で見れる機会はない。
格の違いみたいなものを痛感する。


「綺麗…」
「ん」
「何その気持ちのこもってない返事」
「素直でいいだろ」


庶民の前でも、そんなに着飾らないといけない?
オレたち全然裕福じゃないのに。
近距離で王族見れるのはレアだけど、嬉しさは出てこない。
嫌味ばっかり浮かんでくる。

用意された豪華な椅子に、王族らしく座る。
オレまで勝手に背筋が伸びるくらい。
オーラがすごい。


「アリシア様は、皆様の踊っている姿を見て、お相手を決められます」


静まっていた会場がざわつく。
実際に踊ってるところを評価されるのか。
実技試験みたいなもの。

当然かもな。
姫に恥をかかせるようなダンスしかできないヤツは。姫とは踊れない。


「だってさ、マイク」
「オレに振るな」
「踊らないの?」
「ああ」


エドが離れていった。
ダンスの相手を探しに行ったんだろう。
姫と踊るための実技試験を通過するための、相手。

音楽が流れ始めて、相手を見つけた人から踊ってる。
エドが踊ってる相手の女子が、エドの邪魔をしなければいいけど。

オレ自身が姫と踊ることに興味はないけど、エドがしたいなら応援する。
口には出さないけど。
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