Only Three Months
「お前ら、配置つけ。来客だ」


…来客?
考えられるのは、ひとり。

その姿をこの状態で見るのが、オレにとって苦痛だって分かってるんだ。


「アリス、待ってたよ!」
「ちゃんと来てくれて嬉しい」
「お誘い、ありがとう」


オレを殴ってたヤツらとは思えない声。
アリスが来たってことは、エドも来てる?
エドがもしいなかったら、この状況をどう切り抜ける?


「この教室、普段の授業では使ってないんだ」
「すごく綺麗でしょ?」
「確かに…」


オレの今の位置からアリスは見えない。
エドも見えない。
エドは声もしないから、来てるかさえ分からない。


「ここから、町が見えるよ」
「窓側来て」


アリスが動いてくれたおかげで、アリスの姿が見えるようになった。
アリスの後ろを歩く、エドの姿も。
やっぱり、来てる。

エドが戦闘できるイメージはないだろうから。
基本的に、オレがこうやって暴行されるとき、あとからオレの手当てをしに来てくれるのがエドだ。
今回は、アリスがいるから。

アリスを見やすい位置へ少し移動する。
この集団の中心人物が3人、アリスを囲んでる。
アリスは窓の外を見ていて、たぶん気付いてない。

この状況で、アリスが狙われているのはエドも気付いてる。
ただ、何かする前に動いたらオレたちの負けだ。
オレの噂がまた勝手に広がるだけ。
どうせなら、買って噂になりたい。
どっちにしても、いい噂が流れることはないけど。


「きゃっ!」
「何して…」


身体が動きそうになるのを必死で抑える。
まだ、音を立てて動いていいタイミングじゃない。

ボスらしき男がアリスに後ろから抱き着いた。
別の男がアリスの足に触れて。
また別の男は頬に触れて。
一体誰の身体に触れてんだよ。

エドもアリスに近づこうとするけど、左右から男に捕まれて。
オレを見はってるはずの男たちの意識は完全に、アリスだ。


「離してっ」
「離すわけないだろ、アリス」
「一緒に遊んでくれるって言ってたじゃん」


その言葉に、アリスがこわばるのが見えた。
早く、助けてあげないと…。

…エドのタイミングを計る。
オレが出て行っても、エドが動けなかったらふたりとも捕まってしまう。
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