Only Three Months

「そのような提出はされました？」
「大事件の最中ですから、見落とされたのでは」
「君、IDを」


アリスがバッチを渡す。
サーが手に入れた、偽造のID。
もちろん、アリーの本当の情報なんて入ってない。


「…ありました。
　きちんと提出されています」
「それで、私の子に何か問題でも？
「養子関係での兄弟が登録されています」


サーを無視して、役人が話を進める。
授業を止めているのもおかまいなしだ。
クラスの視線が、オレにも向かってくる。


「誰だ？ このクラスにいるのか？」
「僕です」


アリスが立たされてるこの状況が嫌で、自分から立ってしまった。
サーの動きも見つつ、相手の様子を伺う。
いざその時になると、不思議と落ち着けるものなんだな。


「お名前は？」
「マイケル・リリーです」
「どういう経緯で、ジャクソンの養子になったのか、説明してもらえるかな？」


ヴィクトリア王国の庶民学校に、アルバートの関係者であるサーの養子が通ってる。
入学が先だったとしても、珍しいケースなのに変わりはない。


「幼いころに両親を亡くして、一人で生活していたのですが、
　遠出をした際に偶然出会って意気投合、サポートを受けるために養子になりました」


至って端的に。
クラスメイトの前でこれ以上言わせないで欲しいという雰囲気を持たせつつ。


「こちらの方は？」


別の役人が、アリスに同じ質問を投げる。
…応えない。


「アリス、話しなさい」


サーが促しても、話そうとしない。
アリスは、口を堅く閉じていて。


「政府の方々を目の前にすることはほとんどないので、緊張しているのかもしれません」


兄弟としての助け舟を出してみても、役人は不思議がるだけだった。
話さなくてもいいようにならないかって思った。
そんな甘い人間じゃない。

アリスの言葉は、オレの予想を越えていた。