Only Three Months
姫が会場に戻ってくる。
また、執事に先導されて、椅子へ座る。


「ここで、アリシア姫よりご挨拶です」


姫が庶民相手に何を話すのか、興味はある。
国の政治を動かしてる人間だから。

王族なんて、庶民の暮らしなんて見ていない。
こういう舞踏会が、毎日行われてるって思ってるんだろう?

長いドレスを引きづりながら、マイクスタンドの前へ姫が移動する。


「皆様、こんばんは。
 アリシア・バイオレットと申します。
 どうぞよろしく」


姫が会釈程度に頭を下げる。
形式通りに拍手をする。
ここにいる人で姫の名前を知らない人なんていないだろうに。


「こちらの席より、皆様のことを見ていました。
 そして、これからわたくしと踊っていただく方を決定致しました」


王族独特の、ゆったりした話し方。
全員に、はっきり聞こえるような。

休憩の間にIDからの情報を見て、誰にするか決めたんだろう。
たぶん、執事が。
こういうの、姫自身が決めてるとは思えない。
姫が決めた体にするだけ。


「あまり長々とお話して、皆様が楽しむ時間を減らしたくはありません。
 ですから、早速ではありますが、わたくしのお相手を発表したいと思います」


ざわついて、静まる。
姫から直接名前を呼ばれるのか。
これはすごく光栄なことだろう。
貴族とか商人とか、上級階級でもなかなかないことなはず。


「今夜のわたくしのお相手は…」


姫の視線が、オレたちで止まる。
チラッとエドを見ると目が合って。
すぐに姫に向き直る。
やっぱり、エドが選ばれるんだ。


「…マイケル・リリー、わたくしの前へ」


…え、オレ?

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